「il Cellare (イタリア携帯事情)」

何かの雑誌か新聞のコラムで、ヨーロッパ(EUかな?)の中で、イタリアは携帯電話の普及率が
1位だったか2位だったかという記事を読んだことがある。

おしゃべり好きなイタリア人は、同時に、必然的に携帯好きである。
確かに街で見る限り、年配の人を除いてほぼ100%のイタリア人が、
携帯電話を持っていそうな感じがする。(バスの切符は、70%も買ってない感じがするけど)
そして、バスや電車の中だろうが、食事中だろうが、運転中だろうが、勤務中だろうが、果てまた警備中だろうが、
もし電話がかかってくれば、まったく構うことなく、
おなじみの「ぷろんとぉ〜?」(日本語のもしもしと同様に電話に出たときの独特の挨拶)
と電話に出て、そして皆、イッセイ尾形顔負けの身振り手振りで(日本人からみれば立派な一人芝居に近い)、
うれしさ、疑問、怒り、そして愛情などを伝えまくる。決して用件だけで済む事は無いのではないかと思う。

日本では、すでにマナーとして電車やバスの中で携帯電話を使用することは禁止されているが、
イタリアでは、乗客だけでなく、バスの運転手が、携帯で喋りながら運転をしているのは、”極々普通”の風景である。
一度、空港からのバスに乗ったとき、さあ出発という時になって、運転手に電話がかかってきて(どうやら奥さん)、
12時にはフィレンツェに着くからもうちょっと寝ないで待ってて、などと”誰にでも聞こえる大きな声で”話始めたため、
平気で出発が10分近く遅れ、(感情の起伏のたびにブレーキが緩むので10分間で3メートルくらい前に進んだけど)、
ようやく電話が終り出発、ちゃんと電話を切ってから運転するんだなと少し感心していたのもつかの間、
出発後またすぐ電話がなり、結局その後運転をしながら30分ぐらい話してた。
路線バスの運ちゃんも、いっつも誰かと電話してるし、たぶん電車の運ちゃんも平気で喋ってんじゃないか、と思う。

そんな携帯電話を、イタリアに来て約1ヶ月、”ようやく”手に入れた。
なぜ”ようやく”か。時間がかかったのには、2つ理由がある。
まず1つは、よし買うぞと決意した時に、運悪くイタリアがヴァカンツァの季節に突入し、
携帯電話を売る店も、もちろん軒並みすべてお休み。(つまりイタリアでは、夏休みに携帯を買うことは非常に難しい)
そこで、2週間待たされた。

もうひとつの理由が、とにかく携帯電話が高いこと。
それで買うぞと決意するのに2週間かかった。
これだけ携帯が普及しているにもかかわらず、イタリアの携帯電話はものすごく高い。
”話せる”だけの携帯でも、下手したら100ユーロ近くする。
カメラつきのNEC製の最新携帯を買おうと思ったら、500ユーロ以上する。
(携帯屋のディスプレーの前には、バスケットボールを眺める黒人少年のように、
このカメラ付携帯を欲しそうに眺めているイタリア人が必ずいる)
日本にいた時には、携帯は話せるだけでいいと思っていた僕も、
こんな、白黒ディスプレーで単音の着信音で結構重いうえに、
必要以上に小さいボディーに、必要以上に個性的なデザインが施されているため、
非常にボタン操作がしづらい携帯電話に(まんまファミコンのコントローラーみたいな携帯まである、横に使う)、
1万3千円近く払うことに、非常に抵抗があった。

そこで、1ユーロでも安い店を相棒と根気強く探し、これ以上の店は無いと迷いがなくなるまで、
2週間かかったわけである。(で、そのときにはもう夏休みに入っていて、さらに2週間待った)
我々の携帯選びのポイントは、@ドイツ製であること、A軽いこと、B安いこと。
ドイツ製にこだわったのは、信じがたいことだけど、
携帯電話の機械(メーカー)によって”通じやすさ”が大きく違うよ、というアドバイスを受けていたためである。
よってイタリア製はNG。日本製、韓国製は非常に高いのでNG。
で、結局買った携帯は、SIEMENS製の常識的なデザインの単音白黒表示。74ユーロ也。
(ただその後、ドイツに旅行したときに、試しに携帯屋をのぞいてみたら愕然・・・
カラー液晶は当たり前で、しかも日本のように1ユーロから。
カメラつきだって100ユーロ以下・・・・。イタリアで買うんじゃなかった。)


イタリアおよびヨーロッパの携帯電話の料金システムは、日本やアメリカとまったく違い、
通常プリペイド方式である。つまり料金先払いで、支払っただけ話すことができる。
残高が減ったら、また料金を支払う、といった感じ。
まあ、電話会社にとって取り損ないの無い、電話会社都合のシステムだとは思うけど、
利用者にとっても、基本料金が無い(=使わなければタダ)、着信だけならタダ、
使った後から予想以上の請求が来ることが無いなど、それなりのメリットがある。
また、僕のような留学生たちにとっては、プリペイド方式のため、本人確認や保証金などが無く、
購入がとても簡単というのも非常にうれしい点でもある。
また日本と一番システムが異なる点は、携帯の機械本体と電話番号が独立してることである。
ヨーロッパでは、携帯の機械とは別に、電話番号を買う必要がある(5ユーロくらい)。
番号は、ICチップになっていて、それを差し込むことによって使用可能となる。
チップの形式は、各会社共通なので、TIMからVodaphoneに買えるのも、携帯本体を買い換える必要な無く、
新しいチップを差し替えるだけである。つまり日本のように会社ごとに携帯の機械があるのではなく、
電話自体は各会社共通。
また面白いのは、他の人の携帯でも、自分のチップを差し込むことで、即自分の携帯として使うこともできる。

もう1点。基本的にヨーロッパの携帯は、各国ローミングされまくっているため、
ヨーロッパ中どこへ行ってもそのまま使える。非常に便利だ。
ただし、ローミングされると一応国際電話になるので、結構高い。
だから、ドイツやスペインなどからイタリアに留学してきてる人に気軽に電話をすると、
彼らは大体自分の国の携帯をそのままイタリアで使っているため、
たとえその人が目の前にいたとしても、イタリア→ドイツ→イタリアといった通話経路になるので、
かなりの料金(3〜5倍くらい)になってしまうので要注意。
また友達が不意に外国へ旅行してる間に電話をしてしまっても、普通につながるけど、
勝手に国際電話になっているのでこちらも要注意。

以上簡単に、イタリアおよびヨーロッパの携帯事情です。

まあ、そんなわけで、僕も無事「ぷろんとぉ?」デビューを果たしました。
もし気が向いたら掛けてみてください。バスに乗ってたって、バスを運転してたって、ちゃんと出ます。

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