Buon SCIOPERO! (よいしょーぺろを!)

SIOPERO(ショーペロ)。日本語に直すとストライキである。
ラテン国家のボス的存在イタリアは、ストライキのメッカ。
7年前ぐらいにイタリアを旅行したときも、国鉄のスト(といってもその時は「車掌」のスト)に悩まされたこともあり、
今回のイタリア訪問でも到着したときからある程度の覚悟をしてきた。
滞在1ヶ月目までは、特に目に付くショーペロはなく、さすがイタリアもEUになってかなりマシになったか、
と一瞬見直しかけたのもつかの間、そんなのはまったくの勘違いで、さっそくショーペロジェネラーレ(つまりゼネスト)。
バスも電車も郵便局も、仕舞いにはジャーナリストもストとかで、その日は朝からニュースもやっていない。

それからというもの、あるわあるわ、まさにショーペロの嵐。
まずは、バスのショーペロ。
学校まで毎日片道20分かけてバスで通う僕にとっては、バスのショーペロが一番痛い。
だいたい月に1,2回。「何日の何時から何時までショーペロします。」なんてスト予告の紙ぺらが、
バス停に張り出され、当日にはまず回避されるなんてことはなく、必ずショーペロに突入する。
一日中動かないというストは少なく、たいていはおそらく学生の通学時間を避けた時間であろうスケジュールで
ストは行われるのだが、(朝の6時から9時まで、昼の1時から3時までバスは動いて、それ以外は全面ストップ)
スト開始と終了の前後30分ぐらいは、ほとんど動いてないし、動くと言ってる時間でも、
基本的に目茶苦茶なスケジュールで運行するので、やっぱり1日中街は大混乱。
ショーペロは15時からだからと早めに学校を引き上げて2時半ごろからバスを待っていても、
一向にきやしない。結局そのままバスが来ることなく仕方なく家まで1時間以上かけて歩いて帰る。
で、歩いていると他のバスは4時ごろになっても動いてたりして、もしやと思いながら後ろを振り返り振り返り歩くけど、
やっぱりバスが来ることはない。
そんな調子だから、よっぽど一日中止まっているショーペロの方が、
その日はあきらめて家でじっとしてるから良かったりする。

さらに困るのは、ショーペロイレゴラーレ。直訳して「不規則なショーペロ」。
普通のショーペロ自体十分イレゴラーレなのだが、ちゃんと訳すと「予告なしショーペロ」。
突然バスや電車がなくなるのである。
そうなるともう大変。僕なんかまだ1時間ばかり歩けば家に帰れるからいいのだけれど、
イタリア人の多くは、結構郊外から街まで通っているので、
タクシーの奪い合い、そして迎えの車で道路は大混雑。帰れずに駅で野宿する人まで出る始末。

そしてこの年末年始(といっても毎年のことらしいけど)のショーペロ大ブレイクには、ほとほと参った。
ともかく毎日のようにショーペロが行われ、バスを乗るのに1時間近く待たされるのはザラ。
結局街に出ること自体あきらめてバス停から家に逆戻りしたことも何度か。買い物もままならない。
ニュースも、毎日ショーペロの話題ばかりで、新聞には今週のショーペロ一覧が載り、
TVでは「明日のショーペロは、ミラノとジェノバでバスが24時間、ローマでは8時間、
ボローニャとフィレンツェは未定です」といった感じ。ったく天気予報かい。

バスや電車だけでなく、ここ最近は経営悪化が深刻な航空会社のショーペロも多く、
加えて航空管制官や空港職員なんかも時々ストをするから、
月に3,4回は飛行機が飛ばない日があり、旅行者の人はさぞ大変なクリスマス休暇だったと思う。

そんなわけで、日常的に発生するショーペロに日々イタリア人は戦っているのだが、
意外とイタリア人の多くは、ショーペロに寛容らしい。
基本的に悪いとされるのは、経営者だったり、いつまで経っても年金問題を解決しようとする姿勢を見せない国家だったりで、
それらの悪に対抗する労働者の手段として、ショーペロは至って重要かつ当然の権利として認知されている。
ショーペロで悩まされている被害者の彼らだが、それと同時にショーペロを行う当事者でもあるのだ。
だから語学学校の先生も、そんなに仕事が大変なら何で日本人はショーペロしないのよ!と、
逆にたしなめられる始末である。
しかし、ショーペロの効果のほどはというと、あまり芳しいようには見えず、
日本のように交渉によって回避されるなんてことは、基本的にありえない。何か改善されている様子も見えない。
(といっても日本のストは、ほぼ馴れ合いになってるからだろうけど)
またショーペロの多くは、金曜日か月曜日に行われることが多く、つまり、ただの3連休欲しさのショーペロというフシすらある。

何はともあれ、バスや電車、飛行機といった公共機関をはじめ、公務員、学校、銀行、スーパーなど、
ありとあらゆるものがショーペロを行うイタリア。
もうすっかりどんなショーペロが起きても驚かないようになっていたつもりだったが、
先日、極めつけともいえるショーペロが発生した。
その名もショーペロデイビレッティ、訳して「切符のスト」。
最初、なんのこっちゃ?とバス停に張ってあるビラを眺めていたが、
よ〜く読むと、「何月何日はバスに乗っても切符の改札をするのはやめましょう」と書いてある。
つまり、あまりのバスのストの多さに怒った”乗客のストライキ”である。
要は、その日はみんなでバスに無賃乗車するストライキを決行する、「切符のスト」だったのである。
さすが、すごいぞ、イタリア!!

最後に。
あるショーペロジェネラーレを控えた前日、バスを降りるときにある青年が友人に行った別れの挨拶は、
「BUON SIOPERO!(ブオンショーペロ)」、直訳して「よいショーペロを!」。
よいストライキって・・・・。

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